私の好きな作家さんの一人辻村深月さん。
ほぼコンプリートしているのですが、「あ、これまだ読んでないわ」と何気なく読み始めてたのですが
心がザワザワするような、なんとも後味の悪い、でもまた読み返したくなるような一冊でした。
タイトルにある通り「噛み合わない過去」について、4編の短編からなる短編集です。
噛みあわない会話と、ある過去について 辻村深月著
因果応報という言葉がぴったりなそんな短編集です。
お腹が痛くなるような、過去のイヤなことを思い出すような、自分を顧みることができる一冊です。
【注意】表紙はパステルカラーですが、内容はブラックです。
#辻村深月 さんの「噛みあわない会話と、ある過去について」#読了。
モヤモヤしか残らない、黒辻村ワールド。大人になって人間関係に思うところがある人にはオススメ。私はきっと両方の立場を通過したんだろうなと自責の念しか残りませんでした・・https://t.co/M1cG7GRMAt pic.twitter.com/FmBpI7T2sl
— ひよこ@兼業投資家 (@chick_invest) July 23, 2020
ナベちゃんのヨメ
若いころとか、人の彼氏に難癖をつける人っていなかったですか?もしくはしていませんでしたか?
本人が幸せならそれでいいんですよ。もし、仮に騙されていたり、別れることになったら、それはその時。
ナベちゃんの気持ちを知らずに、都合のいいポジションに置いていた、という紛れもない事実。
学生時代から社会人になって、価値観や大切にしていくものが変わっていくのは当然。ナベちゃんはそれを決断できたというだけの話なんですよね。
が!昔も私そうだったし、まるでAさんのようだわ、と昔を苦笑しながら読むことができました。
パッとしない子
小学校教員の美穂側か国民的アイドルグループの一員である高輪佑、どちらに共感できるかでずいぶんと印象が違う作品になるんじゃないかなと感じます。
高輪佑の気持ちも分からなくないですが、最後はなにもそこまで言わなくても、言ったところで自分が救われるのか?とも感じますが
言わずにはいられない、言いたい、んでしょう。
私も言わずにはいられないことはありましたから。
ママ・はは
子供ころって母親からの影響を多大に受けて育ちます。
スミちゃんの心も完全にいなくなった母親と新しく作られた存在の母親を生み出すことでバランスを取っているのかもしれないですね。。
こういう狂気も怖い。
早穂とゆかり
早穂の立ち回りも褒めたものではないですが、ゆかりの復讐劇もアッパレ。
パッとしない子もそうですが、言わずにはいられない。
ゆかりは周りに早穂のことをどう伝えていたのか?の描写がなかったですが
ただただ後味の悪いストーリーです。
きっと、あのあとの夕食は味がしないだろうなあとぼんやり思いました。
過去に振り回されるけど、復讐したいかは別問題
自分の中にも過去のモヤモヤがありますが、復讐したいかは別。そして、加害者というのは恐ろしいまでに自覚がないことが多く、私自分もきっとそうなのであろうと感じます。
興味本位でひとについて語ることは誰も幸せにしないんだなと。
辻村深月さんの陽の部分ではなく、陰の部分が感じられる一冊です。
読み心地のよい本ではないので、気持ちに余裕のあるときに読んでみてはいかがでしょうか。